よっちゃん 高倉健と会う [イリュージョン]
わたし高倉健に声かけらたのよ
テレビのワイドショーを見ながら
二人で昼ごはんを食べている時でした。
「わたしこの人見たことあるわ」
「そりゃそうよ。毎日見てるじゃん」
「ううん。違う。スーパーで見たのよ」
「そんなことあるわけないじゃない」
しばし「………」
「でも、あの人はホントに会ったことあるのよ」
「誰と?」
「ほら、江利チエミの元旦那さん」
「え? 高倉健?」
「そうそう。高倉健」
「んなことあるわけ無いでしょ。だいたいいつよ」
「去年かな」
「高倉健は去年死にました!」
「ホントだもん。△△駅で切符買ってたら声かけられたのよ」
「なんて?」
「◯◯に行くにはどうしたらいいんですか。僕不慣れなもんでって言ってたわ」
「どこからそんな……」
ここまで来て、
あ! しまった! と
ついつい反撃してしまう自分にストップ。
いまさら遅いと思いつつ、
「すごいなあ、ママ」
と持ち上げました。
幸い、テレビの話題が変わったので
それ以上ゴキゲンを損ねずにすみました。
それにしても、かなりくわしい状況を言うわけですよ。
もしかして、ほんとのほんとにそういうことがあったのかも……。
もちろん去年のことじゃなく。
そもそもよっちゃん、去年にひとりで駅なんて行ったことないですから。
憧れ男子に声かけられた……とか?
たぶん、娘時分に
ひょっとしてすごい映画俳優とばったり出くわしたことが
あったのかもしれません。
赤木圭一郎が大好きだったと聞いたことがあります。
親に嘘ついて学校の帰りに映画に行ったことがあったそうです。
まあ、高倉健とか赤木圭一郎に会ったとは言いません。
きっとそんなことは万が一にも無かったでしょう。
だけど、そんな有名人じゃなくて、
憧れてた男子に声をかけられたことがあったやも知れません。
乙女なよっちゃんを見るのは
親ばかならぬ、子ばかですが、
とてもキュンキュンするぐらいかわいい。
と、楽しそうに話すよっちゃんを見ながら、
そんなことを妄想してみました。